働くメンバーのつながりを深め、参加者のメンタルを整えるこれまでにないチームビルディングプログラムが注目を集めています。
コワーケーション.comにもコンテンツ事業者として登録いただいている、「おとなの図工クラブ」を主催する鎌田奈那美さんに、プログラムの内容や得られる効果などを聞きました。
「図工」は子どもだけのもの?
──「おとなの図工クラブ」はどんなプログラムなのでしょうか。
独自の「図工」メソッドを取り入れた、非日常を味わいながら参加者の素直な気持ちを引き出すチームビルディングプログラムです。
企業の研修というと、座って講義を聞くようなスタイルを思い浮かべる方が多いと思いますが、私たちのプログラムはそうではありません。
小手先のスキルや知識の習得ではなく、組織の長期的な成長に欠かせないとされている、“関係性”や“思考の質”にアプローチすることを重要視しています。
──図工、アートに着目しているのがユニークですよね。
日本では「図工」や「アート」というと、“子ども向けでは?”と思われることもあるのですが、決してそうではありません。
アメリカやイギリスなどでは、アートセラピーは国家資格にもなっていて、大学で体系的に学ぶこともできます。
日常生活で物事を表現する際、基本的には言葉を使うと思うのですが、自分の奥底にある感情や思考を全部言葉で表現できるかというと、必ずしもそうではありません。
無意識・無自覚な領域は誰しもが持っていて、それを表出させる際に手を動かして“描く”、“作る”というのが有効なんじゃないかと思っています。
「言葉以外」で通じ合う体験を
──具体的にはどのように進めていくのでしょうか。
アートセラピーとコーチングをかけあわせて、その企業や組織の状態やねらいに合わせたオリジナルのプログラムを提供しています。
一例で言うと、先日は、アイスブレイクからはじまり、チームに分かれて自分の本音や価値観の部分を描き出して、語り合っていただく3時間ほどのプログラムを実施しました。
──これまでにプログラムを実施した企業で、印象的なシーンはありますか?
とある企業様で、海外会社との合併後に「おとなの図工クラブ」のプログラムを実施いただいたことがありました。
コロナ禍の合併だったため、リアルで集まることが難しい状況でしたが、アフターコロナのタイミングではじめて一堂に会する機会があったんです。
組織メンバーは国籍もバラバラで、日本語・英語をそれぞれ話せない方もいました。
そこでアート表現を通じて、自分のありたい姿や成し遂げたい思いなどを語り合ったところ、共感や相互理解が生まれ、みなさんの表情がみるみる明るくなっていったんです。
プログラ区の最後に、今後の道筋を示すビジョンボードを作成したのですが、ビジュアルをきっかけに価値観を表出し合うと、例え言語が通じなくてもこんなにも一体感が生まれるんだと実感しました。
上手い・ヘタではない。無邪気なあの頃に戻ろう
──普段の業務では伝えにくい「本音」や「思い」が出せたと。
どうしても業務内だと、自分が大切にしていることや苦しいと思っていることなど、喜怒哀楽や本質的な部分を語り合う場面ってなかなかないと思うんですよね。
「おとなの図工クラブ」を通して、それらを安心安全な場として出し合っていただく。
いいとか悪いとか正解不正解ではなく、共感できるところもあれば、そこは自分とは違うなと認識するところもあって。そういうことも含めて、互いに尊重し合える関係性を築いていただける場だと思っています。
──絵に苦手意識を持っている方もいるのではと思います。
小学校低学年ぐらいまでの頃って、図工が好きなお子さんが多いですよね。参加者の方も、昔は好きだったと話す方もいらっしゃって。
ではなぜ、大人になると絵を描くことが嫌いになってしまうのかというと、大体の方が「うまく描けないから」「絵心がなくて恥ずかしい」と仰るのですが、それってすごく大人的な思考だと思うんですよね。
上手いとかヘタとか、何がいいとか悪いとかではなく、無邪気に楽しむ自分に戻りましょう、ということも最初にお伝えしています。
右脳を刺激して、しなやかに生きる
──どんな場で活用されている企業が多いですか?
心理的安全性や他者とのつながりが薄いことに課題を感じている企業様からお声掛けをいただくことが多いです。
コミュニケーション活性化やエンゲージメント向上が期待できるため、内定者や新入社員、中途入社のオンボーディングから、ビジョン浸透など全社イベントの際にも活用いただいています。
普段言葉で思考を伝えることが少ない技術職の方や、つい正解を求めてしまう・失敗ができないと感じていらっしゃる中堅のビジネスパーソンの方にもぜひおすすめしたいです。
──最後に、プログラムに興味をお持ちの方にメッセージをお願いします。
通常の業務で自分のことさらけ出すのは難しいと思うのですが、場の力と手法としてのアートを使って可能性を引き出すプログラムです。
私たちとしては、研修で取り入れていただいた後も、業務で活かしながら継続的に組織の関係性をつくっていくことにこのプログラムを活用いただきたいと考えています。
想像力や発想など、右脳的な考え方も必要とされている時代、このプログラムを通じて正解は一つではないこと、それぞれの幸せを考えることにもつなげていただけたらと思います。
みなさん、子どもの頃に無邪気に落書きをして楽しんでいたような感覚で、一度体験いただければ嬉しいです。