これまでに、「自己選択型のプログラム合宿」などユニークなコンセプトの合宿を開催してきたIT企業・ガイアックス。コロナ禍で合宿を中止・延期する企業が多かった中で、感染対策をしながらリアルでの合宿を開催しました。
どんなコンテンツを行ったのか、実施後の効果とは──?合宿を企画したガイアックス ブランド推進室の木村智浩さんに話を聞きました。
*プロに学ぶ:前編「ガイアックスの合宿は、なぜ参加者の満足度が高いのか?」はこちら。
お寺で合宿開催。その理由とは?
──2022年のコロナ禍は、「沈黙のワーケーション合宿」というコンセプトでお寺での1泊2日の合宿を行ったそうですね。なぜお寺で開催したんですか?
コロナ禍でかつてない大規模なリモートワークが続き、メンタル不調者も出てきていました。業務が全てオンラインで行われることにより、雑談や自由な会話がしづらくコミュニケーション不足をみんなが感じていたんです。
そんな時だからこそ、部署を越えてリアルで長時間交流ができる合宿を開催できないかと模索しました。
そこで目をつけたのが、「黙食」や「沈黙」にフォーカスして感染対策も徹底できる「宿坊での合宿」です。
日蓮聖人ゆかりの地でもある山梨県見延町の宿坊が、参拝者や観光客が来なくなり疲弊していることを知り、実施に至りました。
──どんなプログラムを行ったのでしょうか。
濃厚接触者を出さないようにしなければいけないという制約を逆手にとって、「話す交流」ではなく「話さない交流」を行うプログラムを企画しました。
中でも人気だったのが、「死の体験旅行」。自分にとって大切なものを紙に書き出して、それを順々に捨てていく。失っていくことを疑似体験するプログラムです。基本的には一人で黙々と内省して、最後に残した内容と感じていることをみんなで発表し合いました。
──どんな気づきがあったのでしょうか。
普段仕事をしている上では、〇〇担当のAさん、〇〇部署のBさんといった仕事ありきの向き合い方だったのですが、その人にとって本当に大切なものを共有してもらうことで、“こんなことを考えている人で、こんな価値観を持っている人なんだ”と深い部分に触れられる不思議な時間でした。
──合宿参加者の方からはどんな声がありましたか?
「瞑想やお勤めで心が落ち着き、その後の会話がより内面の深いところから湧き上がってきた」
「雑念が整理された。自分と向き合い、相手の状況も踏まえて思考ができる心の余裕が生まれた」
「これまでの合宿の中で一番満足度が高い合宿だった。清々しい特別な時間を過ごすことができた」
などの声をもらいました。コロナ禍を経て、非日常的な環境で自分に向き合ったり、余白を持ったりすることが豊かさにつながり、明日からの活力になると感じた合宿でした。
https://www.youtube.com/watch?v=59-Mg0rhyis
なぜ合宿を開催するの? 経験者が語る合宿のメリット
──(コロナ禍前の)合宿では、現役社員だけではなく採用予定の方にも声をかけてきたとか。
はい、コロナ禍を除けば、僕らは合宿を開催する際、新卒内定者や中途の採用候補者など入社前の人や卒業生にも声をかけて、本人がよければ参加してもらうようにしています。
よくあるじゃないですか。飲み会をやった後に「こういった場が最初にあったらよかった。この関係性からスタートしていればもっとよかったのに」みたいなことって。
同じ時間を過ごすと、自然と一体感も生まれやすく、その後の仕事もしやすいと感じています。
──これまでさまざまな合宿を企画・実行してきた木村さんが感じる、合宿の良さを教えてください。
部署などの垣根を超えて、一気に関係性がつくれることですかね。
今僕たちの会社は9割ほどがテレワークで仕事をしているんですが、Slackなどのテキストコミュニケーションが中心で、社内でも“名前は見たことがあるけれど、実際には会ったことはない”人がたくさんいます。
そういったこれまで関係性がなかった人たちと、個人的なことも含めてフランクに話せるのは合宿ならではだと思います。
よく、イノベーションには弱い繋がり(weak ties)が重要だと言われていますよね。いつも同じメンバーとばかり話していても、新しいクリエイティブなものは出てきづらい。
他部署や考え方の違う人との会話によって、事業上のアイデアが浮かんでくることも多いんです。違う立場や組織の人とのコミュニケーションを通じて、新たな気づきやアイデアが生まれるのは全社合宿の大きなリターンの一つだと感じていますね。
▼お話を聞いた人
*プロに学ぶ:前編「ガイアックスの合宿は、なぜ参加者の満足度が高いのか?」はこちら。